現場系男子にご用心!?【長編改訂版】

と、一通り悶えたところで妙に冷静になり、がばっと身体を起こすと、自分の身体を確認した。

服に乱れはない。脱がされた形跡もない。
下の方も……うん、特に不快感はない。

どうやら酒の勢いでうんぬんではなさそうだ。
そのことにホッとする。

ひとりで寝るには広すぎるセミダブルのベッドから離れ、寝室であろう部屋の扉をこっそり開けると、細長い廊下の先にリビングの扉が見える。

扉はガラスが埋め込まれていて、ガラスの先に見覚えのある男の後ろ姿が見えた。

やはりここは岡田さんの家だ。


「お……はようございます、でいいですか?」

リビングの扉を開け、そう岡田さんに声を掛ける。
岡田さんは煙草を加えながら、コーヒーを片手にカーテンを開けていた。

「あ、おはよう。もう起きたんだ」

そう言って、微笑む。
朝っぱらだってのに、この爽やかさである。

ワックスでしっかりセットしていた髪も、どうやらシャワーを浴びたからか無造作に流れているが、またそれが昨日とはちょっと違う爽やかさを醸し出している。

そしてTシャツに黒のスウェットのズボン。
Tシャツの袖から出た腕は、意外と筋肉質でガッチリとしていてとても男らしい。

その格好はオヤジスタイルの基本だが、彼が着るとそんな風に見えないから不思議なものである。


「あの、私なぜここに……?」

私は恐る恐る聞いた。

酔っぱらってしまったのは分かる。
何故ならあるときから記憶がない。なんにも覚えていないのだ。

しかし酔っぱらって記憶を無くしても帰巣本能はあるらしく、いつもは朝起きると自分の家に戻って寝ている。

だから、こういった他の人の家に泊まるってことはなかったはずなのに。
なのにどうして私が、岡田さん家のベッドで寝ているのだろう。

「だってめちゃくちゃ酔ってたからさ。一人で帰ろうとしてたけど、あんなに酔っぱらっているのに帰らすわけにいかないじゃないか。俺も飲んでいて車使えないし、しかも俺は里緒奈の家を知らない」

……だからこの家に連れてきたってことか。

「別に良かったのに。私どんなに酔っぱらっても、帰れる特技があるんですよ」

「ここから里緒奈の家は徒歩じゃ相当掛かるでしょ?もし途中でなにかあったら俺が困る」