「さぁ、お腹も満たされたところで、次行きますか」

「いい加減教えてくださいよ。どこ行くんですか」

「着いてからのお楽しみ。一時間くらい走るから、フォルダーにある缶コーヒー飲んで。コンビニで買ってきたやつだから、少し温くなってしまったかもしれないけど」

「……ありがとう。遠慮なく頂きます」


車はどんどんと街中から離れ、のどかな風景が広がっていく。
天気は雲ひとつない晴天。でも紅葉もほとんど終わり、少し寂しい感じがする。

「そろそろ冬が来ますね。あ~、雪やだなあ。早めに出ないと会社に間に合わなくなるから」

「だね。車も渋滞するし。滑って事故ったら最悪だ。でも、冬には冬の良さもあるし。まず熱燗が旨い時期。鍋ももちろん」

「わかってらっしゃる」

「酒飲みは、季節の良さをアルコールで表現するよね」

なんてたわいのない話で盛り上がり、あっという間に時間は過ぎて目的地へと着いた。

田んぼと山に囲まれた場所の中で、ポツンと大きな建物。
外の広大な敷地には、何機もの飛行機が展示されている。
その光景には見覚えがあった。


あ、ここは。

私の好きな場所だ。


「航空博物館。里緒奈も来たことあるでしょ?」

「もちろん。前に来て閉館までずっといたことがあります」

「アハハ、やっぱり。俺飛行機が好きでひとりで何回か来たことはあるけど、里緒奈とも来てみたかったんだよね。里緒奈なら俺の話を分かってくれそうだから」

「なるほど。なんとなく言いたいことが分かりました」

岡田さんは中の展示物を見ながら、この機体の構造がどうとか、話が出来る人と来てみたかったんだ。

確かにその気持ちはわかる。
とはいえ、岡田さんに比べたら私の知識なんて、大したことはないんだけど。