時間が近付き、約束されたコンビニへと向かう。
コンビニの前には、「KIZUKI」のマークが入った車が一台止まっている。
中では本を物色しながら私を待つ、岡田さんの姿が見えた。

岡田さんは私を確認するなり笑顔で軽く手を振ると、片手に白い袋を下げコンビニから出てきた。

黒のジャケットにグレーのマフラー、少しタイトなジーパンとこちらも至ってラフな格好。

けれどやはりイケメンだ。
なにを着ても様になる。

作業着+スーツ姿しか見たことがなかったから、少しドキッとしてしまった。


「約束通り来てくれた。来なかったら鬼電するところだった」

「もういい年した大人なんで、さすがに約束を破るようなことはしませんよ。それより鬼電って恐ろしいこと言わないでください。ストーカーですか」

「おっと、プライベートでの敬語はなしって言ったよね?」

「うぐ……。それは、徐々に直しま……、直すから見逃して」

「はは、まあいいや。徐々にね、徐々に。じゃあ行こうか。車乗って」

そう促され、私は後部座席に乗ろうと車の後ろへと回る。
ドアを開けようとしたところで、岡田さんは怪訝な顔をした。

「なにやってんの?」

「え?いや、後ろに乗ろうかと」

「は?違うでしょ。助手席。里緒奈の席は後ろじゃないよ、俺の隣」

そう言うと運転手席に乗ろうとした岡田さんが、わざわざ助手席側まで回ってドアを開けた。

「乗って」

「……はい」

別にどこに乗ったっていいと思うのだが、岡田さんは気に入らないらしい。

というか助手席ってカップルだったら彼女の特等席で、岡田さんの彼女でもなんでもない私は、正直言って乗りたくない。
誰かに見られちゃうかもしれないし、後ろだったら窓に軽くスモーク貼ってあるから、一緒にいるってバレなくて済むんだけど。

でも乗れってドアまで開けられたし、無理矢理後ろに乗って機嫌悪くしても後々困るしなぁ……。

仕方なく私は、言われた通りに助手席に乗った。

「さて。今日のスケジュールとしては、お昼食べて、あるとこに行って、その後先週行った居酒屋で飲むって流れにしてるけど、いいかな?」

「あるとこってのは?」

「まだ内緒。とりあえずお昼だな。里緒奈の性格からいって、洒落たレストランよりラーメン屋の方が気兼ねがなくていいでしょ?」

「……見抜いてますね」

「やっぱりね。じゃあ美味しいラーメン屋があるから、そこに行こうか。秘伝のダシが効いた醤油ラーメンが格別なんだ」

「それは期待。決まりで」