そう言うと岡田さんは、目を丸くして私を見つめた。

「……ほ、本当に……?」

「うん。今日課長と話をしてね。お前にはいい経験になるんじゃないかって、一緒に行った方が私の為にもなるって言われたんだ。そしてまた工場には戻れるから行って来いって、そうも言われた。本当はあの工場を辞めたくはないけど、でも和宏くんと離れるのも嫌なんだ。……だから知らない国に行くのは怖いけど、和宏くんと一緒ならきっと大丈夫だよね?」

岡田さんは無言で頷いていた。
少し泣きそうな、そんな顔で。

「私さ、今まで言ってなかったけど、知らない間に和宏くんのこと、凄く好きになってたみたい。……好きだよ、和宏くん。ずっと言わなくてゴメン」

そう言った瞬間にまた、唇を落とされる。

その唇は熱を帯びていて、なんとなくだけど余裕がないようなそんな荒いキス。
いつもはどんなに甘い言葉を私に降り注いでも、こんなになることはなかったのに。

「……ヤバい。凄い嬉しい。嬉しすぎて自制きかなくなりそう」

「は!?ちょ、ちょっとここはダメだよ!?火も付いてるし!」

「うん。だからちょっと止める。ゴメン、お腹空いているよね?だけどさ我慢出来ないんだ。先に里緒奈のこと食べちゃっていいかな?」

「な、なに言って……!まだお風呂にも入ってないし、それに怪我!私怪我してるから!!」

「風呂とか関係ないし、それに手は痛くしない気をつけるから。無理、俺本当にもう無理」

そう言うと私を横抱きに抱えて寝室へと連れて行く。
そして覆いかぶさるようにベッドに横たわると、そのまま唇を塞いだ。

そのあとのことはもうなにがなんだか、あまり記憶もない。
岡田さんがずっと小さな声で「好きだ、愛してる」って囁いていたのだけは覚えている。


そのたびに身体の奥が熱くなって、不思議と私も同じ言葉を返しているのだ。




……結局、落ち着いたころにはもう夜中になっていて。
随分と遅い夕飯……、いや夜食を二人で食べた。


「はい、あーん」

「……だからいちいち食べさせるのにその掛け声はやめて」

恥ずかしがる私をよそに、岡田さんは満面の笑みでご飯を食べさせてくれた。

なんだこのバカップルぶりは。
こんなの絶対人には見せられない。

でも岡田さんのことだから、人前でも気にせずやっちゃうんだろうな。
……ああ、これからが心配だ。