「矢代くん〜今日も空いてる?」
前方から語尾を伸ばしたような、甘えた声が飛んできた。
瑞季くんはまるで条件反射みたいにすばやく私から離れて、その女の子──北野美結ちゃんを見る。
「今日は俺、用事があって」
「ええーっ! 遊べないの?」
「うん、ごめん。それに、この雨だし」
「雨でも建物の中で過ごせばいーのに。……あっ、先約がいるってこと?」
「……んー、まぁ」
「……もしかして、あさひちゃん?」
目を逸らすのが遅れてしまって、美結ちゃんと視線がぶつかった。
まずい。このままだと、この間みたいに美結ちゃんに怪しまれて、瑞季くんの機嫌も悪くしてしまう。
ここは、私が否定したほうがいいのかな?
ちらりと、横目で瑞季くんの表情を盗み見た。
口を固く結んでる。目元は影になっていてよく見えなかった。
どうして……何も言わないの?



