「中瀬さんに なんの用なの? 葛西」
特に感情のこもらない声で瑞季くんが相手にそうたずねた。
瑞季くんがどうしてそんなことを聞くのかわからない。胸がまたドキッとした。
わざわざ、皆の前で私の名前を出すなんて。
聞かれた男子生徒──葛西(かさい)くんは、ちょっと不思議そうに首を傾げる。
「何って……隣のクラスの化学係連れてこいって言われたんだよ、せんせーに」
「……そうなんだ」
「うん」
「それなら別にいい」
「は?」
「じゃーまたね、葛西」
ひらりと手を振って、瑞季くんはそのまま教室を出ていく。
葛西くんと私は、そこでようやく目が合った。



