私に冷たい瑞季くん。
他の女の子には優しい瑞季くん。
嫌われてるんだから、しかたない。
だけどせっかくここまで追いかけてきたんだから、渡さないと……。
「や……、矢代くん待って……!」
今度は言いつけどおり、苗字で呼んで引き止めた。
無視されるのがこわくて、美結ちゃんと触れてない方の瑞季くんの手首を掴む。
寒いのに、なぜか手袋をしてない瑞季くん。
ひやりと冷たい体温が伝わった。
瑞季くんが驚いた顔で振り返る。
その直後、
「……っ、触んな」
パンっと、手を振り払われた。
その反動で、持っていたハンカチがひらりと地面に落っこちた。
瑞季くんの瞳がそれを捉えたのが分かった。
ハッとしたように口元に手をもっていく。
そして、私が動くより先にすばやくハンカチを拾い、瑞季くんはそれを乱暴にポケットに押し込んだ。
「───。」
瑞季くんが何が言った。でも聞こえなかった。
舌打ちに近い、吐き捨てるような音だった。
間違っても、「ありがとう」とか、そんな感謝の言葉じゃなかったことは分かる。
瑞季くんは目を丸くしている美結ちゃんにもう一度優しく笑いかけてから、歩き出した。



