吐息がかかるくらいの位置まで顔を寄せられて、あまりの近さに頭が軽くパニックを起こす。
「学校で話しかけんなっつっただろ」
耳元で低い声がそう言った。
「それと名前」
「えっ?」
「呼ぶなよ。イライラする」
「ご、ごめんなさい……」
……無意識だった。
学校では矢代くんって呼ばなきゃいけないのわ分かってたのに……。
不機嫌な瑞季くん。
それもそうだ。嫌いな幼なじみに、美結ちゃんとの時間を邪魔されたんだから。
さっき瑞季くんが距離を詰めてきてびっくりしたけど、その理由がだんだんと分かってきた。
美結ちゃんに聞こえないようにしてるんだ。
私に対する言葉遣いとか態度で、王子様みたいなキャラが崩れてしまわないように。



