──と。


カバンを肩にかけて教室を出ようと歩きはじめたところで、何か青い物が床に落ちているのが目に入った。



あやうく踏んでしまいそうになり、慌てて立ち止まる。


焦点を合わせると、それは青いハンカチだということが分かり。


同時にドクンと心臓が鳴る。



「これ……瑞季くんのだ」



落ちていたのは瑞季くんの机の横の通路。


間違いない。この前、泣いてる私に押し付けてくれたハンカチがこれと同じものだった。



スマホをポケットから取り出す際に、はずみで落っこちてしまったのかもしれない。



ゆっくりとかがんで 拾い上げる。



「矢代くんのなの? 」


「うん……」


「だったら急いで追いかけないと。矢代くんもう教室出てっちゃってるよ?」


「そ、そうだよね」



……でも、私が追いかけたらどうなるんだろう。

学校では話しかけるなって言われてるし、この前だって怒らせてしまった。


そもそも私は、瑞季くんに嫌われている……。


その場に固まってぐだぐた悩んでいると、



「ああーっ、もううざったいなぁ!!」



友香ちゃんか怒ったみたいな声を出して、私の腕を乱暴に引っ張って歩きだした。


早足だし引っ張る力がものすごく強いから危うく転んでしまいそうになる。



「ほらっ、見えた!くつ箱のとこ!!あたしここで待ってるから行ってきな!!」