「あさひ。今日、一緒に帰ろうか」




その言葉にあまりにも現実味がなさすぎて、瑞季くんの声をどこか遠くで聞いてるような、不思議な感じがした。



私は、ただ彼の瞳を見つめるばかりで何も言えない。




「さっさと帰り支度しろよ」



低い声でそう言って私に背を向ける。



状況がよくつかめないまま、無意識に立ち上がった。


クラスの女の子たちの視線を感じながらも、急いでスクバを肩にかけてあとを追いかける。



こちらを振り返りもしないで早々と教室を出て行くその姿を、見失わないように。




“ 今日、一緒に帰ろうか ”


確かにそう聞こえた。



追いかけて、いいの……?