「──中瀬さん」
先生に名前を呼ばれて起こされた時には、時計は12時45分を回っていた。
予想以上の時間眠ってしまったことに驚いて、急いでベッドから降りる。
「すみません、ベッドありがとうございました……っ」
「いいえ〜。もう落ち着いた?」
「はい…ありがとうございます」
病気でもないのに長時間ベッド使わせてくれた上に、こんなに優しい声言葉をかけてくれる先生。
感謝の気持ちと申し訳なさでいっぱいになり、もう一度深くお辞儀をして保健室をあとにした。
12時45分ということは、まだ昼休みが始まったばかり。どのクラスからも賑やかな声が聞こえてくる。
廊下を進みながら、友香ちゃんが待ってる教室に早く戻ろうと自然と早足になり。
そんな中、私が足を止めたのは教室棟に続く渡り廊下を渡りきった所にある、非常階段の前だった。
ここからはギリギリ死角になる、少し出っ張った壁の向こう側。
何やら、人の話し声が聞こえてきて。
誰かが立ち話をしているんだろうと、たいして気にも留めすに再び足を踏み出そうとすれば。
「……瑞季……っ」
私の耳に届いたのは、
甘い、女の子の声だった。



