「何って…ふつーに喋ってただけ。
……ね、中瀬さん」
「あ、う、うん…」
コクッと頷く。
だけど怖くて瑞季くんの顔を直視することができずに、俯いた。
「……こんな地味でおとなしいやつと喋って、何が楽しいのお前」
そんな声が上から降ってきて。
反射的に見上げると、ひどく歪んだ笑顔がそこにはあった。
まるで私を心から蔑んでいるかのような
色のない、無機質な瞳。
「……は? お前何言ってんだよ。中瀬さん可愛いし、話してたら楽しいし───」
「うるせぇよ」
静かだけど、低くて、よく通る声で
瑞季くんが山崎くんの言葉を遮る。
「嫌いなヤツを、可愛いなんて思えるわけねぇだろ」
吐き捨てるような一言。
そして、私たちに背を向けると
ガタンッと少し乱暴な音を立てて瑞季くんは自分の席に座った。



