「ごめんっ、つい……。そんな顔させるつもりじゃなくて……」
申し訳なさそうに頭をかき始める山崎くん。
私は慌てて首を横に振る。
「 瑞季くんが私を嫌いだってずっと前から知ってるし、本人からも何回も言われてきたからもう慣れてるし、大丈夫……!」
自分でも驚くほど明るい声が出た。
それはもう、逆に、不自然なほど。
すると山崎くんは
「そっか……。ごめんね」
と、また小さく謝った。
「あいつさ、ほんとに何考えてるからわかんねえの。自分のこと話そうとしないし……」
「……」
「みんなの前での完璧キャラも俺の前では多少崩してるけど、それでもやっぱりまだ仮面かぶってるように感じてさ」
うん……すごくわかる。
うまく言葉では表現できないけど、
瑞季くんは、「矢代瑞季」というイメージを決して壊さない。
それが昔一緒に遊んでた頃の瑞季くんのイメージと同じものなのか、
今となってはよく思い出せないけれど。
話していても、私たちが踏み込んではいけない部分には上手く線が引かれていて……
どんなに頑張っても、きっと本当の瑞季くんを見ることはできないんだと思う。



