それは、高2の初冬。


11月も終盤に差しかかった、なんてことない
ある日の放課後のことだった。




「 あさひ」


瑞季くんが静かな声で私を呼んだ。

帰り支度をしていた手を止め、まばたきをする。


思考までもが一瞬固まった。

空耳だと思った。


瑞季くんが

私を下の名前で呼ぶなんて



──ましてや、学校で。


今、教室には人がほとんどいないとはいえ……

絶対にありえない事だから。