◆ それは、高2の初冬。 11月も終盤に差しかかった、なんてことない ある日の放課後のことだった。 「 あさひ」 瑞季くんが静かな声で私を呼んだ。 帰り支度をしていた手を止め、まばたきをする。 思考までもが一瞬固まった。 空耳だと思った。 瑞季くんが 私を下の名前で呼ぶなんて ──ましてや、学校で。 今、教室には人がほとんどいないとはいえ…… 絶対にありえない事だから。