あっけらかんと、そんなことを言い放つ。
「……人の話聞いてた？」
「聞いてたよ。お前が矢代のトップになったとき、お前のお父さんと同じように忙しくなって、家にも帰れなくて、中瀬さんに寂しい思いをさせざるを得ない。そしてかつての母みたいに、出ていってしまう」
「……別にそこまでは言ってない」
「でも、結局はそういうことだろ」
いつもはあまり口を出さない遼平が、珍しく厳しい。
「瑞季が怖いのは、中瀬さんを傷付けてしまうことじゃない。結婚したあとに、お前のことを嫌いになって、離れていってしまうこと」
ぐさりと
胸をナイフで刺されたような感覚がした。
そんな俺に向かって、次は葛西が口を開く。
「大事なものを手に入れたあとに、それを失ってしまうことが、お前は何より怖い……」
目眩がする。
頼むから、もう何も言わないでほしい。
せっかく嘘ついて、自分の気持ちも誤魔化して終わらせたのに。
「自分が傷付くことを、初めから避けようとしてんだよな。つまり、逃げてる」
頼むから
俺を暴かないで。
