「……だけど瑞季は今さら、そんな圧力に負けてへたるようなやつじゃない。精神的な脆さなんてとっくに捨ててる」
「……どういうこと?」
山崎くんは、言葉にするのをためらっているみたいだった。
私の目をじっと見つめて、それから目をそらす。
「矢代の弱さは、あさひちゃん。
そういうことじゃねーの?」
山崎くんの変わりに、葛西くんがそう言った。
意味がいまいち飲み込めなくて、ふたりを見つめ返す。
「あさひちゃんのせいとか言ってるわけじゃないよ。ほんとに、全然違うから」
「……」
「矢代は、自分で自分の首を締めてるんじゃないかな」
ますます意味が分からず、困惑してしまう。
葛西くんがうつむいた。
それから、小さい声でつぶやく。
「ごめんね。俺は最初から、全部知ってたんだ」
さっきまでの笑みはもう消えていた。
申し訳なそうに項垂れる。
「矢代の婚約者っていうのは、俺の、双子の妹なんだ」



