結局、腕を振り払うこともできずに化学室まで来てしまった。
「やっと来たか。おっせーよお前ら」
その言葉は以前にも聞き覚えがあって。
でも、中にいたのは車のキーを人差し指でくるくると回す葛西穂希くんだった。
「先に車乗っとけってさ」
どうして白井先生のカギを葛西くんが……。
疑問に思った私の頭の中を見透かしたように、
「白井せんせー、俺のいとこなんだよね」
そう言って、ニヤリとわらった。
「化学の教師なんてやってるけどさ、ああ見えてあの人、結構な実力者なんだぜ?」
そして、座っていた教卓の上から「よっ」と飛び降りる。



