今、「瑞季」って言った……?
なんで私にそんなこと聞くの?
山崎くんは、私と瑞季くんの関係を知ってるの?
妙な緊張が体を支配する。
「昨日、瑞季と一緒に帰ってたよね」
「え……あ……」
「えっ? そうなの?あさひ」
答えようとすれば、友香ちゃんの大きな声が遮った。
「あ、うん、実は……」
友香ちゃんは昨日塾があるからと先に帰っていたから、知らないのも当然で。
目を丸くしている友香ちゃんを視界の端に捉えたあと、私は山崎くんに向き直る。
「一緒に帰ったけど、瑞季くんは自分のことは何も言ってくれなかった」
「……そっか」
山崎くんは少しだけ微笑んだ。
「わかった、ありがとう。急に引き止めてごめん」
「ううん、全然……」
───もしかして。
山崎くんは何か知ってるの……?
喉まで出かかったその言葉。
結局言えないまま、山崎くんは教室に戻って行ってしまった。



