まだ、教室には人が残ってる。
この会話はあまり聞かれないほうがいいと思って、声のトーンを少しだけ下げた。
「えっと……後から話すね」
「ん、わかった」
急いで荷物をスクバに詰める。
課題用のワークとかが入ってるせいで、肩にかけるとズシッと重かった。
「ごめんね、友香ちゃん」
待たせたことを謝って、そのまま教室を出ようとした、そのとき。
「中瀬さん」
背後から急に声が飛んできた。
振り向くと、相手と目が合う。
立っていたのは、瑞季くんといつも一緒にいる山崎遼平(やまさき りょうへい)くんだった。
中学も別だったから、山崎くんとは
まともに話したこともない。
いったい、なんの用だろう……。
少し首を傾げてみせると、山崎くんはグッと顔を寄せてきた。
「瑞季、昨日なんか言ってなかった?」
耳元で、ぼそりと囁かれた声。
一瞬、思考が停止する。
……え?



