「おう、中瀬。どうしたー?」
「えっと、あの……」
心臓が鳴り始める。
なんて言えばいいんだろう。
私が瑞季くんのことを尋ねるのは変かもしれない。
だけど、モヤモヤしたまま月曜まで待つなんていやだ……。
「みずきく…、えっと、矢代くんは今日、どうしたんですか……?」
先生の目は見れなくて、おまけに声は震えてしまった。
「……あぁ、矢代」
一瞬の沈黙ののち、先生が口を開く。
「今日は家の用事だってさ。お前も知ってると思うけど、あいつは大企業のお坊ちゃんだからね……いろいろあるわけよ」
「……そうなんですね、ありがとうございます」
何か突っ込まれる前にと、急いで頭を下げて教室に戻る。
……家の用事。
ひとまず安心した。
「先生と何話してたの?」
すでに帰り支度を済ませた友香ちゃんが尋ねてくる。
「ちょっと、瑞季くんの……」
言いかけて、ハッと口をつぐんだ。