「あさひ、こっち向いて」


瑞季くんの言葉はまるで魔法だ。

催眠術にかかったみたいに、雑念なんか全部消えて私の世界には瑞季くんだけになる。



指先が触れて、

目の前がフッと暗くなった。


手で視界を奪われたあと

唇が、そっと塞がれた。


それはほんの一瞬。

手がゆっくりと離れていって、光が戻ってくる。


ぶつかる視線。

何か言う前に、今度は首の後ろに腕が回された。



「ごめん、抑えきかない」



魔法というより、麻薬かもしれない。

甘く、しびれる。


「……っ」


頭が固定されて、落とされる唇を素直に受け入れることしかできない。