「どうかした? 何か考え事?」



顔をのぞき込まれて我に返ると、もうそこはいつもの通学路だった。


瑞季くんと二人で帰っているというのに、私ときたら上の空で。

5年も前のことなんて、はっきり覚えてなくて当たり前なのに、なぜだか無性にもやもやし始めてしまった。



「あのね、夏休みのこととか覚えてる?」

「……夏休みって、いつの」

「えっと、5年生とか6年生のとき、 」

「知らない」



即答だった。


「俺飲み物買ってくるけど、あさひは何かいる?」


まるで思い出すことを拒否するみたいに目を逸らして、話題を変えられた。



「……いらない」


そう小さく答えると、「ここで待ってな」って呟いて、瑞季くんはコンビニの中に入っていく。


優しくしてくれるけど。

瑞季くんはきっと、私との過去なんかに興味はないんだ。