「……季」



ぼんやりとした意識の中。



「瑞季!」



ハッと現実に戻された。



煙草の煙が鼻を突く。

目の前には、厳しい顔をしている父。




「お前、人の話を聞いていたか?」

「すみません……ぼうっとしていて。えっと、当日は母さんも来るって話ですよね」

「そうだ。この家を出ていったにしても、一応はお前の母親だからな」

「……はい」




重苦しい空気に息が詰まりそうだった。

時計の秒針がやけに遅く感じる。



「それから……これが本題なんだが」



父が、煙草を灰皿に戻した。



「相手方の都合で、結婚式の時期を早めたいという申し出があってだな。来年の4月……お前の誕生日に」