緊張と戸惑いで心臓がうるさい。
椅子を抱えなおして、瑞季くんを見上げる。
「……否定しなくてよかったの?」
「別に……。好きに言わせとけばいい」
「でも、瑞季くんはイヤだよね?」
「……」
返事はない。
私の声なんて聞こえてないとでもというように、真っ直ぐに前を見つめている。
やがて視聴覚室の前までくると、いったん自分の椅子をおろしてドアを開けて、先に私を中に入れてくれた。
中は誰もいなくて、カーテンがかかってるから暗い。
照明スイッチを押すと、蛍光灯の眩しい光が目にささった。
あとから入ってきた瑞季くんが、ゆっくりとドアを閉めると、ここは二人だけの空間になる。



