ごめんと小さく謝って、慌ててそばに駆け寄る。
「お前いくつ持てる?」
「え? えっと……」
「3つ、いける?」
「わっ」
折りたたまれた椅子をいっぺんに手渡された。
無表情だけと、なんか……怒ってる?
「あの……あと2つくらいなら、持てるよ」
この椅子は比較的に軽い。
瑞季くんは無言でもうひとつ、差し出してきた。
「右と左で2つずつだったらバランスとれるだろ」
「み……ずきくんは6個も持ってくれるの?」
恐る恐る下の名前で読んでみたけど、怒る様子はない。
「余裕。……ほら行くよ」
少しトーンが落ちて、柔らかい響きになった。
胸の奥から、どんどんあったまっていくような感覚。
さっきは寒いと感じていた廊下も、今は熱いくらい。



