瑞季くんを見つめながら、少し考えるように首を傾げた葛西くん。
数秒後、
「わかった」
あっさり頷いたかと思えば、私の肩にそっと触れてくる。
「またね、あさひちゃん。お疲れさま」
「‥‥…っ。うん」
いちいち、距離が近い。
そんな耳元で囁かなくたっていいのに。
癖なのかな。
葛西くんがドアから出ていった直後、
ガチャンと荒々しい音が聞こえた。
それは、瑞季くんがパイプ椅子をたたむ音。
「何ぼうっとしてんの。さっさと動いて」
冷たい響きにビクッとする。
そこにいるのは、もう
" みんなの瑞季くん " じゃない。



