なんだか、また胸の奥があつくなってきて、わけもなく泣きたい気分になった。



嬉しいはずなのに、ひどく悲しい。


ポタリ、とアップルパイの上に涙が落ちる。



慌てて拭って、震える手で一口サイズに切り分けて口に運んだ。



「あさひ」


名前を呼ばれる。



「なんで泣くかな。 そういうのうざい」


「……っ、ごめんなさい」


「泣かせるために誘ったんじゃない。せっかく一緒にいるんだからさ」


「………」


「アップルパイうまい?」


「……うん」


「だったら笑えよ」



言葉とは裏腹に、優しい声音だった。


瑞季くんのその声に一段と胸が締め付けられる。


……逆効果だと思った。