美人でかしこいお姉ちゃんも、かわいくて勝気なふうちゃんも、私からすれば十分恵まれていて……。


少しでいいから、分けてほしかった。


「……まあ、そのひまりのかわいいところは素直なところだと思っているんだけれど。今日は少しご機嫌ナナメみたいね?」


優しい声音が、唇を結ばせる。

お姉ちゃんに会えばいつだって嬉しくておしゃべりになる私が、今日は現れそうにない。


だってこんな姿見られたくなかった。


私のいいところを、お姉ちゃんはまるでとても大事なことのように取り上げてくれるけど。


心の中で私は家族の誰にも、咲にも柊くんにだって見せられないくらい、ぎすぎすしてるんだよ。


綺麗なものが妬ましくて、輝くものが羨ましくて……誰も悪くなんてないのに、どろどろした気持ちは消えなくて。


認めてしまえば楽になるなんて、ウソ。


こんな自分みっともなくて、泣きたくなる。


「ねえひまり。ひとつだけ教えて。今日、学校に行くのは、つらい?」


取り換えられた氷水の音だけが部屋に残る。私はそれを自分で押し当てて、小刻みに首を振った。


つらいんじゃない。逃げたかっただけ。


どうしようもなくなってる気持ちから、現実から、逃げてしまいたかった。