「あたしには何かないんですかー」
「不満があればところかまわず喚き散らすアンタに? そうね……相変わらずそうでよかった」
「言葉の節々に棘が生えてるんですけど!?」
この不良! とふうちゃんが悪態をつくのは、お姉ちゃんが帰ってくるのは大体家族が眠ったあとだから。大学生であるお姉ちゃんとは生活サイクルが違うみたいで、同じ家に住んでいてもなかなか会えずにいた。
「不良ねえ……妹が瞼を腫らして、学校に行きたくないって言ってるのに、理由も聞こうとしないアンタのほうこそどうなのよ?」
「聞かなくたってわかるもんっ」
「それはそれは随分な自信家だこと。それで何回人に迷惑かけて痛い目見たのか、忘れちゃったのね。やあねえ、これだから甘やかされて育ったかわいいだけのバカは」
「オブラァトォオオオ!! 笑顔はいらないからオブラートに包んでお願いします!」
「いやよ。ハッキリ言わないと自意識過剰のアンタには通じないもの」
「ひまちゃん聞いて。あたしは今、言葉の暴力を受けています」
「……仲良くしなよ」
「無理! お姉ちゃんいっつもあたしに冷たい! ひどい! ひまりばっかりかわいがって!」
泣いてやるんだから!と、ベッドに伏せでもしたのか、振動が伝わってきた。
私は、ふうちゃんもかわいがられてると思うよ。お姉ちゃんは暴走気味なふうちゃんをうまくいなせるから、冷たく見えるかもしれないけど。


