ふうちゃんや咲のように、心からメイクが好きで楽しんでいるわけじゃない。多少の興味からしているだけで、別人みたいにかわいくなるわけでもないんだから。


「何言ってんの?」


蒸しタオルがとられたと思ったら、むすっとしてるふうちゃんと目が合った。


「大してメイクの研究もしてないくせに」


――冷たっ! 今度は氷水の入ったビニール袋を押し当てられ、動くなと怒られた。


どうして私が怒られなくちゃいけないんだ。このままでいいって言ってるのに。


ふうちゃんにはわからない。

そこにいるだけで場が華やぐような資質に恵まれた人に、私の気持ちなんか。


「ていうかね、まず聞きなさいよ。そうなった理由を」


開きかけた口を、つぐんだ。


沈黙が落ちた部屋に、「いたの!?」とふうちゃんの声が響く。私は間近に立っていたもうひとりのお姉ちゃんを見上げる。


「どれ」

「……お姉ちゃん、帰ってたの?」


びっくりした私の目元に触れた華奢な指先が、頬をつつく。


「夜中にね。元気そうでよかった、って言わせなさいよ。久々なんだから」


極上に綺麗な微笑みをこぼして、お姉ちゃんは氷水を蒸しタオルに交換してくれた。