「蒸しタオル! あと氷!」
「お、お母さんはご飯準備するわね!」
慌ただしく1階へ降りていくふたりを止める気力も起きず、ベッドの縁へ腰かける。瞼が重い。
「はー……」
寝不足だとも感じるのに、やけに目が冴えていた。
……この前のこと、もう広まってるかな。
運がいいのか悪いのか。土日を挟んでも気持ちは沈んだままでいる。結局あのまま咲のことも置いて帰ってきてしまったから、起きてすぐにも携帯を確認してみたんだけれど、誰からも連絡は入ってない。
じわりとまた視界が滲むから、瞼を拭った。
「――ハイハイハイハイ寝転がって!」
階段を駆け上がってきた勢いそのままに、部屋へ戻ってきたふうちゃんは私をベッドへ押し倒す。あまりに躊躇ないから、されるがままになってしまった。
「さあさあ任せない! そんな腫れぼったい瞼も充血した目も、あたしの手に掛かれば無かったも同然!」
渾身のドヤ顔が、目元に掛けられた蒸しタオルで見えなくなる。氷で冷やしてまた蒸しタオル、を何回か繰り返すらしい。
「……べつにこのままでいいのに」
「何言ってんの!? そんな顔を公衆の面前にさらすなんて……っ考えただけでゾッとする!!」
そりゃメイク込みで外見が最大の武器なふうちゃんからしたら、こんな顔で出歩くのは耐えがたいでしょうけど。私の場合は、
「大していつもと変わらないもん」


