「ひまり~。そろそろ起きないと遅刻しちゃうわよ~。ひまちゃーんっ?」


ドアの外でお母さんが呼んでいる。とっくに目は覚めているものの、起き上がりたくない。


「もー。お母さんうるさいー。あたしまだ眠いのにっ」

「でもひまりが」


ああ、最悪。

バーン!と遠慮なくドアが開けられ、ぎゅうっと顔を枕に押し付けた。


「何よもー、起きてんじゃん! ひまり! アンタのせいであたしまで起こされたっ」


いつもより念入りにメイクできるじゃないデスカ。


心の中で悪態をついたところで、姉その2は強引に布団をめくりあげてくる生き物だ。


「ほら、起きなさい! なんなの、具合悪いの?」


うつ伏せたまま顔を枕にうずめる私は、首を振った。


「じゃあ何。お姉ちゃんにこっそり教えてごらん」

「……学校行きたくない」

「だったら最初からそう言えばいいでしょー? お母さんひまり学校行きたくないんだって!」

「ちょっ……!」

なんで即行バラすかなあ、この姉は!


思わず起き上がると、私の顔を見たふうちゃんが驚愕の表情を浮かべる。


「いやーーっ!! ひまりがブサイクになったああああ!!」

「ひ、ひまちゃん……っま、まさか、がっ、学校で……!?」

「ああもう違う!! 行きますよ行けばいいんでしょ行くつもりだったよ!」


青ざめたお母さんの不安は、あながち無用な心配とは言えなくなるかもしれないけど、本心から学校に行きたくないわけじゃなかった。


行きづらいから、だだをこねただけ。