柊くんは私のことが好きらしい


視線を向ければ、咲が空いた前の席に腰かけるところだった。咲は、デートのことや昼間あったことを聞いてこようとしない。


近くにいたとはいえ、他のクラスの男子が知っていたくらいだ。やっぱり噂になってるのかな。


だけどもう、何をどう切り出せばいいのか。


とにかく早く柊くんへ返事をしないとって、強迫観念のようにとらわれている。


「……帰る? 傘持ってる?」

「超かわいい傘があるよ。真っ黒でね、小さいドクロとリボンが水玉みたいにプリントされてんの。見てのお楽しみ~」


あらかた想像ついちゃったけど……。咲に似合いそう。


「でもちょっと化粧直させて。先輩に会うかもしれないからっ」

「んー。早めにね」と言いながら、私の目は柊くんへ。まだ座って、集まったクラスメイトと話していた。当然のように横居さんたちもいる。


毛先だけゆるく巻かれた髪型は笑い声が上がるたび軽やかに揺れて、メイクも濃すぎず薄すぎず、適度に着崩された制服も大人っぽく見えた。


同じ女子であることは間違いないのに、あの華やかさはなんだろう。どこで差が出るんだろう。


胸の奥が、チクチクする。


私と違って赤くなることも、うろたえることもなく笑っていられる彼女たちを見て思う。きっと外見だけじゃない。


『傘持ってないの?』『貸してあげるよー』なんて、私が簡単に言えないことを言ってたりするんだ。