柊くんは私のことが好きらしい


ノートを提出してから教室へ戻ると、柊くんと目が合った。気のせいかと思うほど速く逸らされてしまったけれど、たぶん私が想像できる、いちばん最悪な理由じゃないと思う。


柊くんは優しいから……すぐに私を嫌いだなんて言わない。


「えー。もうすぐ学園祭があることは知っているだろうが、準備に向けて実行委員やら出し物やら今度のRHRで決めるんで、そのつもりでなー」


はーい。とクラスメイトが生返事をし、


「雨強くなるらしいから、部活あるやつは気を付けて帰れよー」


担任がそう締めて、帰りのHRが終わった。


外では雨がぱらつき始めている中、クラスメイトは続々と席を立っていく。


「傘もってきてねーよーっ」


大きな声で嘆くのは、ふっくん。その周りには昼間と同じように小鷹くんと、席に座ったままの柊くんの姿。


帰り、自転車なのに大丈夫かな。雨脚が強くなるって、何時頃からだろう。


携帯を取り出し、画面をスワイプした手を止める。


調べてどうする、私。本当に、ちょうど部活が終わる頃に大雨になったとして。それを知ったとして、傘を貸そうか?って話し掛ける勇気もないくせに。


そもそも、こんな風に事前に調べとかないと話し掛けようとも思えない時点で、私って……。


「ため息やめてくださーい」