柊くんは私のことが好きらしい


……けど、なんだろう。私は何を気にしているんだろう。


日陰の自分じゃ、柊くんには釣り合わないってこと? 私が彼女になろうものなら、柊くんがバカにされるってこと? そんなの、柊くん本人が否定してくれたのに。


あんなに真っ赤になって告白されて、優しくされて、いつも真っすぐ想いをぶつけてくれる柊くんを、嫌いだなんて思ったことは一度もない。


だから知りたいって思った。受け身でいちゃダメだって、動いたんだよ。


かっこいい、って。かわいい、って思う。近くにいればどきどきして、遠くにいれば目で追ってる。


『ひまりが好きってこと』


嬉しかった。二度目の好きも、どうしたって嬉しかった。


それなのに、私は、どうして。


「ぶっちゃけ、付き合う気あんの? ないの?」

「――……」


痛いくらいの沈黙が私を追い込むようだった。


答えられない。だって、何ひとつ決めてない。


しあわせだって、楽しいって、それだけを噛み締めるばかりで、何も。


私は、あのオレンジ色の教室で起きた夢のような出来事が、消えないようにって。ただ、それだけを……。


「コバエがぶんぶんと、うるっさいわあ」


顔を上げると、前に出るでもなく、咲が腕を組んで男子生徒をねめつけていた。