どうしてこの人が? 柊くんにノートを貸して、自分で返しに来ないことはなかったのに。
「なん、で……」
手渡された私のノート。なぜかもう一冊、柊 仁と書かれた真新しいノートまであった。
柊くんが自分で二冊提出すならともかく……別クラスの人に預けたり、する?
「あー。さっきまでメグと話してて、ちょうどノート写し終わったところでさ。今日まで提出って聞いて、家庭科室に用あるから代わりに出しておこうかって、俺が」
「出してないじゃん」
黙ってそばにいた咲が、すかさず突っ込んだ。するとふたりの男子は困ったように、けれど興味を押し殺せないように、笑った。
「まあ、これはきっかけ作りっていうか。要件は別にあったっていうか」
「は? 意味わかんないんだけど。用があるなら回りくどいことしないでさっさと言いなよ」
「やー。メグに聞こうとしたんだよ? でも機嫌悪そうっていうか、なあ」
そうそう、と頷く男子を見ながら、心臓が嫌な緊張をまとっていくのがわかる。
「単純に疑問なんだけど、返事ってまだ保留中なの?」
思考さえ一瞬フリーズして、単純な疑問に、唇が震えてうまく答えられない。
「え、っと……」
「俺ら昼休み、近くにいたんだよね。デートまでしたんだろ? 横居らに聞いたら、付き合ってないって。なんで付き合わねーのかなって」
「わかんないよなー。何がダメなの? メグ超いい奴じゃん」
知ってます、けど。


