柊くんは私のことが好きらしい


「暗っ! なんなの、暗っ」


先に清掃を終えた咲が、化学室のベランダでふたつの黒板消しを押し合わせているだけの私に言った。


「チョークの粉全く落ちてないし。やる気ないならやらんでよろしい」


そう言われては、黒板消しには悪いけど早々に元の場所へ戻した。


「暗いわー。咲まで暗くなりそう」


教壇に立ったままの私は振り返ることができない。暗いって言われるくらい、ひどい顔をしているんだろう。


昼間、泣き出してしまいそうになるのをなんとか堪えてから教室へ戻った。休み時間が終わるギリギリ1分前。柊くんのことも横居さんたちのことも見れなくて、咲にはどこ行ってたのって怒られた。


デートをしたって噂にはなってないみたいだけど、咲はどこまで知ってる? 何から話せばいいんだろう。


……私、どうしたらいいんだろう。


「いたいた。高遠さーん」


見向いた先にいたのは化学室へ入ってきた男子2人組だった。クラスメイトじゃない。誰だろうと戸惑っていれば、ひとりの男子が持っていたノートを掲げた。


「これ! メグから預かってきたー」


柊くんの友達。だけど、にこりとも笑い返せない。