柊くんは私のことが好きらしい


釣り合ってない。調子乗ってる。見ててイタイ。ウケる。横居さんが向けてきた視線には、そんな言葉が秘められている気がして、カッと頬が熱くなった。


「ね、高遠さん。これちょうだい?」

「え、ずるい! 私も欲しいっ」

「あたしが先ーっ」

「でたー。女子のプリ交換。貰ってどうすんだよ」


……笑いものに、するんです。


『高遠さんが彼女になったら、メグがバカにされんの!』


あのときは深く考えなかったけど……考えたくなかった、けど。私が柊くんの告白を受けるっていうのは、こういうことだ。


「ねー。小さいのでいいからさ、もらっていいでしょ?」


――ぐしゃり。奪い取ったときか、胸に抱いたときか。大事な思い出が手の中で折れ曲がった。


「あげられません、すみません」

「えっ……ちょっとー!?」


誰の顔も見ずにその場を走り去る。恥ずかしくて、悔しくて、泣き出しそうだった。


何度も口にしてきたけど、こんなに願ったことはない。


もっとかわいく生まれたかった。


「……っ、」


無理だけど。今更そんなこと願っても、意味のないことだけど。私は、私じゃない自分になりたい。柊くんと並んでも釣り合うような。一緒にいても見劣りしないような、そんな自分に。


……だって、柊くん、困った顔してた。からかわれて、嫌そうだった。


だからきっと、デートしたこと、黙ってたんだ。