どき、どき。静かに速まる鼓動を意識しないように笑う。困ったな。


「いいけど、今日までだよ?」


座学数回分、まとめて10ページくらいはある。そのことも伝えると、普段通り借りようとしていた柊くんは目を丸くさせ、頭を抱えた。


「うわー! マジかよ! 絶対無理じゃん俺っ」

「代わりに書いてやろうか」

「やだよ! 小鷹、金とるじゃん!」


わーっと大袈裟なほどリアクションをとる柊くん。貸す以外で、できることがあれば手伝いたいけど、代筆はバレるし無理だよなあ。


気転のきかない私で申し訳ない……。


やるだけやってみる、とげんなりしている柊くんにノートを渡すと、小鷹くんは「諦めないのか。えらいな」と感心していた。


「あ、そ、そーだ。ふっくん」


手持無沙汰になった私は、目に入ったふっくんへ近寄る。小鷹くんの背後で「おまえらホントひどい……」と涙目になっていたから、いやでも目に入っていたんだけど。


「移動販売車のクレープ屋さん、言ってた通りおいしかった。ありがとう、教えてくれて」


お礼が遅くなってごめんね、とも伝えれば、ふっくんの涙目が徐々に明るくなっていった。


「だろー!? あれはマジで食べとくべきだったべ!? 女子は絶対、てか、ひまりは好きだと思ったんだよなーっ」

「うん、好きだった。メニュー付のチラシもかわいくて」