不自然に窓の外へ目をやったまま、歩調を変えずに廊下を進む私は「おー、」とふっくんの声が聞こえたことで前を向いた。


「ひぐっ!」

「ひまりーっ」


笑顔の柊くんに呼ばれたのとほぼ同時に、顔をゆがめたふっくんが脇腹を押さえている。


な、なんだ……?


柊くん、と呼び返しながらも、そのうしろでふっくんが「学習しろよ」と小鷹くんにたしなめられているのも気になった。


「めずらしーね。ひとり?」

「あ、うん。ノート出しに行こうかなって」

「えっ? なんのノートッ!?」

「クソ……メグ……貴様ぁ……」


驚く柊くんと涙目のふっくんを交互に見ながらも、家庭基礎であることを伝える。


「うわ、やばい。家庭科なのにノート提出とかすんの? そんな話あったっけ」

「あっただろ。実習じゃないときは後日ノート提出してもらいますって、最初の座学で」

「半年以上前じゃん! なんだよもーっ! 提出っていつまで? ノート自体ないんだけどっ」

「売店で買ってこいよ」


焦る柊くんに対して小鷹くんは我関せずだ。色んな意味で。


「んあー……」と宙を仰いだり首をひねっていた柊くんは、私へ視線を注いだ。急にじっと見つめられて、どきりとする。


「ノート、貸してください」


そろりと両手を合わせ、お願いしてくる柊くんは少しだけ上目遣いになっている。自分のかっこよさを活用しすぎじゃないでしょうか。