柊くんに告白される前、たまたまふたりきりになったのは、ふっくんが画策したからだとは本人から聞いている。つまり協力してもらっていたのは柊くんであって、私じゃない。
ぜひふっくんに紹介したいって女の子もいないし。……付き合ってるわけじゃ、ないし。
「1時間目って情報だっけ? 楽だよね」
「なぜ話題を逸らす。俺に彼女はできちゃダメなわけ? こんなに欲しがってるのに? イコール俺の彼女になったら愛されるの方程式が成り立つのに!?」
「成り立たないからフラれるんだろ」
「なんだと!?」
駅構内を出たら、ふっくんが食ってかかった先に柊くんがいた。
自転車にまたがったまま「おはよー」と笑いかけてくる柊くんに、驚きから後退してしまった。
「えっ!? お、おはよう! なんで!?」
驚きを隠せない私にぱちくりと瞬きを繰り返した柊くんは、口元にゆるやかな弧を描く。
「びっくりさせようと思って」
「あ、そう、なの……?」
なにゆえ? 柊くんに告白されただけでも、かつてないほどびっくりしましたけど……。
あ、これっていわゆる恋愛につきものなサプラーイズってやつ? 相手をどきどきさせるために仕掛けるハニートラップ的な?
「びっくりした?」
そりゃあもう! 何度も頷けば、きらきら眩しい笑顔。
うわあ。朝からそんな笑顔を向けられて嬉しいけど。嬉しいんだけど! いるって知ってたら鏡見てから来たのに!