「いいかひまり。初訪問で親父在宅中なんて絶対ダメだぞ。一気にハードル高くなるからな。部屋に通されても落ち着けねーよ」


例え呼ぶことになっても、お父さんがいるときに招くなんて絶対しないけども。


「ふっくんって女子の家に遊びに行ったことあるんだね」

「……あるし……バカにすんなよ……」

「高校生になってからだよ?」

「うるせー!! 部活で忙しいんだ俺はっ!」


まさか幼稚園の頃をカウントしたわけじゃないよね? まさかね。


「なんだその目はっ」

「バスケ部って大変なんだなあと思って」

「それは『同じバスケ部のメグと小鷹はモテまくってるんだから部活関係なくね? プッ…ウケる。かわいそー』っていう遠まわしの嫌味か?」

「ちょっと笑わせないでよ」

「笑わせようと思って言ったんじゃねーよ!」


だって妙に女声の演技がうまいんだもの。


ゆっくり電車が停まり、駅名を確認して立ち上がる。


「はーあ。メグのやつも俺を邪魔扱いするしよぉ。お前らもっと俺に感謝してもよくね?」


改札口に向かいながら、ふっくんはまだ何か言ってる。


「俺、お前らのキューピッドよ? ふたりを引き合わせたの、俺だべ?」

「それいつまで引っ張るの?」

「いつまでも引っ張ってやるわ! もっと感謝しろよぉー……遠慮せずに誰か紹介しろよぉー」


遠慮は微塵もしてないけど、この話題は困るんだよなあ……。