ほとんど地肌の色に近い、ラメ入りのアイシャドウは塗っているけれど、ファンデーションやチークは苦手。
それに、告白されたからって張り切って着飾るなんて、そんなこと私がしたら、いい笑い者じゃんか。
「もう! ほっといてってば!」
振り切るようにドアへ歩き出すと、追ってきたふぅちゃんは「やだ!」とまだおせっかいをやく気らしい。
「ひまりの彼氏になる人は、ひまりが彼女で幸せだって毎日思わなきゃダメなの! そのためにはひまりが今よりもっとかわいくなる必要があるの! 手伝ってあげるから!」
「余計なお世話! そもそも付き合うかもわかんないし……っ、ふぅちゃんがしつこいってお姉ちゃんに言いつけるよ!?」
これで暫く黙るだろうと振り返ったら、ふぅちゃんは『それだけはやめて!』と懇願するでもなく、きょとんと私の背後を見ていた。
勢いよく見向けば、3分の1は開けていたドアの向こうに、見覚えのあるカゴが。
「……お、お母さ……」
洗濯物カゴを持ったお母さんがいた。毎朝、私が洗面所にいるあいだに洗濯物をカゴに入れて干しに行くはずのお母さんがいた。
絶対ドアの前で盗み聞きされていた。じわじわと顔に熱が集まってきた私に、お母さんはどこか気恥ずかしそうに視線を泳がせてから、へらりと笑顔を向けてくる。
「お付き合いする予定なら連れてきていいのよ?」
「うわあぁああああもうほっといてよーーー!!」
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