「やだー! メグのバカーッ!!」
「ははっ。また明日なーっ」
「ばいばーい」
手を振るクラスメイトに混じって、咲も見送ってくれていた。横居さんは相変わらずだけれど、肝心の柊くんは「おーコワ」と笑うだけで。
「まあ俺以外がひまりをどうこうしようなんて、許さないけどね」
なんて恥ずかしげもなく言い切るものだから、繋いだ手を強く握りしめた。
「えっ、マジ?」
「あの話ホントだったんだー」
微かに聞こえる噂話がこそばゆい。
気持ちがふわふわして、あまり現実味がない。
柊くんを見つける視線の中に、私もちゃんと映ってるのかなあ。
「メグ、ついに!?」
「おー。じゃあなー」
なんか、告白されたときもあったな。遠巻きにひそひそ噂されたり、直接尋ねられたり……さすがにこんな堂々とは聞かれなかったから、どんな顔で歩けばいいのか。
「あっ!? おいメグ、マジかよお前―っ!」
真偽を確かめたいのは先輩たちも同じらしい。
うおーって。そんなに盛り上がらなくても。
これじゃあ電車に乗るまでまともに話せなさそう。
「っわ、」
突然ぐいと天高く挙げられたのは、繋いだ手のほうだった。
「両想いになりましたーっ!」
もう片方の手で作られたVサインと満面の笑みに、私の瞳の中は万華鏡みたいにきらきらとしたものでいっぱいになる。
さながらリングの上で勝者に選ばれた気分だ。


