柊くんは私のことが好きらしい


放課後になってすぐ横居さんたちが柊くんを取り囲んでいた。きっと遊びに誘ったんだろう。


こういう場合もあるってこと、覚えとかなきゃなあ。


「メグ何してんの? 行くよーっ」

「いやだから、行かんて」

「だからなんでっ!」

「……」


昇降口の階段を降りたところで憤慨する横居さんから、右上に視線を向ける。


開かれたドアの前で、柊くんは危うく通り過ぎるところだった私を指差した。


「ひまりと帰る約束してるから」


……やばい。きゅんときた。


「はあ!? 聞いてない!」

「聞こうとしないから今言ったんだろー」

「メグが女子とふたりで帰るなんてありえない! ダメ、許さない! 高遠ちゃんがどうなってもいいわけ!?」

「横居は揺るがねえなー」


仏のごとく微笑む柊くんも動じなさすぎると思うけど、おかげで私も腹をくくれそう。というより、この機会を逃しちゃダメだって漠然と思った。


ライバル的存在な横居さんが目の前にいて、かつたくさんの生徒が下校中な今。


「どうなってもいいですか?」


下から顔を覗くように問われた私は、

「……いいですよ」

視線だけ柊くんへ向け、応える。


「言ったね?」


言っちゃいました。

でも怖くないよ。にっと歯を見せて笑う柊くんが、欲しかった言葉だと思うから。


「じゃ、帰りますか」


差し出された手を掴めばぐっと握り返され、引かれるがまま一歩踏み出す。