柊くんは私のことが好きらしい



『今日バイト? 部活休みだから、一緒に帰らない?』


6時間目の授業中に受信したメールに、私は確かにウン!と返信したはず。


「なんで咲と帰ろうとしてるんだろう……」

「は?」


うっかり本音をこぼしてしまった。


「咲とは帰りたくないってか。メグに置いていかれてるくせに」


眉を寄せた咲に毒づかれるのは仕方ないとしよう。問題はなぜ、柊くんが横居さん含むいつものメンバーと廊下を進んで行くのかってことだ。


私が数メートルうしろを歩いてるっておかしくない?


「一緒に帰れると思ったのに……」

「忘れられてるか夢でも見たんじゃない」

そんなバカな。

「それかまた、言ってくれるの待ってるんじゃないの」

「……嘘だあ~」


誘ったのは柊くんだよ? もう攻守交替? ないでしょ! 断固拒否する! でも一緒に帰りたい!


「眼力でメグが気付いてくれると思ったら大間違いだよ」

「うぬう……」


ダメか。下駄箱まで来ちゃったし、約束も反故になる可能性が高くなってきた。むしろ本当に夢だったとか。


「人気者を彼氏に持つと大変だねえ」

「……横居さんに体当たりする度胸があれば、そうでもないんだろうけどね」


ハハと乾いた笑いをこぼし、昇降口へ向かう柊くんの背中を視界の隅に入れながらローファーに履き替える。