柊くんは私のことが好きらしい


「メグをなんて?」

「いや!? なんでも! 続きすんべ!」


慌てて誤魔化す柊くん、新鮮。


「高遠ちゃんは?」

「見に来ただけだって!」


それだけじゃないってば。

フリースローを再開しようとする柊くんに口をとがらせるも、その必死さにほだされないこともない。


喜んでくれたかどうかは見て分かるから、柊くんにだけ届いていればいいかな、なんて。


「……何笑ってんの」


柊くんは拗ねた風に口を曲げて、私のゆるみっぱなしな顔を指摘してくる。


頑張ったご褒美をもらってる。とか、言ったら怒るかな。


「柊くんだって、笑ってたじゃない」

「今のは予想してなかった」

「ふふ」


どうしたってにやけてしまう私を柊くんは悔しそうに見つめながら、手を伸ばしてくる。ぐしゃぐしゃと頭を撫でられ、乱れた髪の毛に怒るところだけれど。


「次は俺の番ね」


強気な笑みを浮かべられて思ったのは、また私の番がきたら頑張ろうってこと。


順番なんて本来なくていいものかもしれないけど、初心者の私にはちょうどいい。


付き合うって、彼氏と彼女って、どういうことなんだろう。


わからないけど、すれ違う悲しさよりも、通じ合える喜びを胸いっぱいに感じられるふたりでいられたら、いいな。