柊くんは私のことが好きらしい


全く退かないふっくんのおかげか押し問答は終わり、小鷹くんは「そういうものか?」なんて私に尋ねてくる。


付き合ったばかりで醍醐味なんて味わえる状況にはいないのだけど、楽しいことばかりでもないんだろうって思うから、曖昧ながらも頷いた。


「ふうん」


納得はしてなさげに、小鷹くんはふいと柊くんを見遣る。


相変わらずみんなとはしゃいで、こちらを気にしてる様子もない。


邪魔してこいなんて、実は冗談だったんじゃない? 日に何度も目があっていたのに、今日はとんとないんだもの。


「ひまりもひまりだけど、メグもメグだな」

「……それは、どういう、」

「片思いでもあるまいし」


はあーっと深くため息をこぼした小鷹くんが見据える先には、柊くんがいる。


お昼ご飯でも賭けているのか、フリースローで誰かが外せば両手を挙げて、ゴールすれば頭を抱えて盛り上がっていた。


あの中に入るなんて、無理。


それなのに、どうしてだろう。駆け寄りたくて、混ざりたくて、じりじりと胸の奥が焦げ付くようなのは。


「……片思いじゃないんだからって言いたくなるのは、柊くんに対してもってこと?」


そんなことを尋ねてしまえるのは、きっと私がじっと見つめていなければ気付かないほど一瞬、柊くんがこちらを盗み見るからだ。


「メグも成長しないな」


手厳しい答えだけれど、その通りだなと思った。


ああほら。また見た。