「ひまり魂抜けてね?」
ふっくんに心配されるなんて……詰んだ。
「今すごい失礼なことを思われた気がするぞ」
「気のせいじゃないかな」
「でもひまりの生気がないのは気のせいじゃない!」
指差してドヤ顔やめてほしいなあ……。
一気に肌寒くなったため、今日から体育の授業は室内で行われることになった。
体育館に響くドリブルの音。バッシュの擦れる音。ボールがリングを通り抜ける音に、歓声。バスケは柊くんを一層輝かせるように、女子の目の輝きもハンパじゃない。
「何? メグ? 呼んでこようか? 嫌だけど」
じゃあ言うなよ!! おちょくってんのか!!
「私だってふっくんなんかお呼びじゃない」
「なんだとこのやろう」
「野郎じゃないし。女子だし」
そして彼女だもん! たぶんね!
「なんだよ~。どうしたんだよ~」
顔を見合わせたけれどそっぽを向いた私に、ふっくんはやれやれと言いたげに隣へ腰かけた。
「不満があるなら言わなきゃ伝わんねえぞー」
「……不満じゃない」
「じゃあ何よ」
ふっくんは柊くんを見たまま聞いてくるから、なんとなく分かっているんだろうけれど。私はそれを口にできるほど努力が足りていない。
彼女になってはじめての登校日。柊くんと言葉を交わしたのは、まさかの朝の挨拶のみ。
話し掛ければいいのに。堂々と隣に行けばいいのに。
私は今日も、みんなと楽し気に笑い合ってる柊くんを眺めているだけ。
……これじゃあ今までと、ちっとも変わってない。