「メグの彼女じゃん」
どきーんっと心臓が生き物みたいに跳ねる。
教室へ向かおうとした私の前には、全員上靴に履き替えるのを待っている、いつかの男女グループが。
違う、って否定されたのが昨日のことのように思い出される。
また言われるのかなあ。
不満げな女子の視線を感じながら、その子にも彼女だと口にする男子にも、ぺこりと頭を下げた。
私は柊くんの彼女、だから。
無反応で通りすぎちゃいけない気がして。
「お、おはようございます……」
それでも気まずいことに変わりはないから、そそくさと彼女たちの視界から抜け出す。と。
「おはよー」
「挨拶してくれたぞ」
「あたしは認めないんだからーっ!!」
思い思いの反応を返してくれて、なんとも言えない気持ちが込み上げた。
「あ。彼女昇格おめでと~」
「昇格ではなくない?」
めずらしく私よりも先に登校していた咲が、お祝いの言葉をくれたマイマイに怪訝な顔を向けている。
「じゃあ何?」
「知らないけど。咲的にはまだ彼女の座に正座してる感あるよね」
「あはっ。確かにまだ恐れ多そうではあるねぇ~」
そ、そうなのか……。
笑うふたりに、柊くんの彼女の座に正座してる自分を思い浮かべてみる。
うーん……どうしよう。否定できない。